カルタヘナ法とは?

目次

ゲノム編集技術を用いて作出した生物を取り扱う際は、「カルタヘナ法」との関係を理解しておくことが重要です。ゲノム編集生物は作出方法だけでなく、導入された核酸の有無や最終的な生物の性質などに応じて、カルタヘナ法の規制対象となる場合とならない場合があります。判断を誤った場合、必要な法令上の手続きが行われないおそれもあるため要注意です。

本記事では、カルタヘナ法の基本的な仕組みとゲノム編集との関係、研究・委託時に確認しておきたいポイントについて解説します。

※本記事は制度に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、法的な助言ではありません。個別の案件については、所管省庁や専門家にご確認ください。

刑部 祐里子Yuriko Osakabe
刑部 祐里子教授のプロフィール
  • 東京科学大学 生命理工学院 教授
  • 生命理工学系 生命理工学コース
  • 所属学会:日本分子生物学会、日本農芸化学会、日本ゲノム編集学会、日本植物生理学会、日本植物学会、日本植物バイオテクノロジー学会
                   

様々な生物におけるゲノム編集技術の応用を目指した基礎研究をテーマに、特に、新規ゲノム編集技術の基盤開発研究を行っています。ゲノム編集技術の医療応用や植物分野の応用技術開発を進めています。

カルタヘナ法とは?

カルタヘナ法(正式名称:遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律)は、遺伝子組換え生物等の使用等を適切に規制することにより、生物多様性への影響を防止することを目的とした法律です。国際的な協定である「カルタヘナ議定書」を、国内で実施するために制定されました。

環境中への拡散を防止する措置を講じないで使用する「第一種使用等」を行う場合は、事前に第一種使用規程を定め、主務大臣の承認を受ける必要があります。このように、対象となる遺伝子組換え生物等を取り扱う場合には、カルタヘナ法に基づく所定の手続きが求められます。

ゲノム編集技術と
カルタヘナ法の関係

ゲノム編集技術で作出された生物が、カルタヘナ法上の「遺伝子組換え生物等」に該当するかどうかは、作出方法や細胞外で加工した核酸の残存状況などを踏まえて判断されます。環境省は2019年、以下のような取扱い方針を示しています

  • 細胞外で加工した核酸(DNA・RNA)を導入していない、あるいは導入していても最終的に残存していない生物:カルタヘナ法の規制対象外。
  • 細胞外で加工した核酸を導入し、それが最終的に生物内に残存している生物:カルタヘナ法の規制対象。

一般に、SDN-1(人工ヌクレアーゼによる切断と自然修復を利用して変異を導入する手法)では、最終産物に外来核酸が残存しないケースが多く、カルタヘナ法の規制対象外となることがあります。

一方、SDN-2・SDN-3では細胞外で加工した核酸を利用するため、最終産物に外来核酸が残存する場合はカルタヘナ法の規制対象となります。なお、導入した核酸が残存していないことを確認するまでは、遺伝子組換え生物等として扱う必要がある点にも要注意です。

規制対象外となった
場合の対応

カルタヘナ法上の「遺伝子組換え生物等」に該当しない生物であっても、拡散防止措置を講じない環境(開放系)で使用する場合には、あらかじめ主務大臣へ情報提供を行うことが求められています。

  • 細胞外で加工した核酸が残存していないことの根拠
  • 改変した生物の分類学上の種および利用したゲノム編集技術の概要
  • 改変した遺伝子・その機能、生じた形質の変化
  • 当該生物の用途、生物多様性への影響に関する考察

提供された情報の一部は公表されることとなっており、カルタヘナ法の規制対象外となる生物であっても、一定の透明性を確保する仕組みとなっています。

食品として利用する
場合の関連制度

農作物や水産物など、ゲノム編集技術を応用した生物を食品として利用する場合は、カルタヘナ法とは別に、食品としての安全性に関する制度にも留意する必要があります。外来遺伝子(外来核酸)が最終産物に残存しておらず、従来の育種技術によって得られる変化と同程度と考えられるゲノム編集食品については、厚生労働省が示す届出制度の対象となっています。

届出された情報の一部は行政機関のウェブサイトで公表されるため、食品としての取扱いとあわせて、カルタヘナ法上の位置付けについても確認しておくことが重要です。

受託会社を選ぶ際に
確認すべきポイント

  • ゲノム編集技術と法令上の取扱いに関する知見:計画しているゲノム編集の内容について、カルタヘナ法上の取扱いや必要な手続きを適切に説明できるか。
  • 核酸残存確認の手法:導入した核酸が残存していないことをどのように確認しているか。
  • 情報提供対応の経験:開放系での使用を予定している場合、主務大臣への情報提供など、関連手続きに関する実績や知見があるか。
  • 対象生物種ごとの対応実績:農作物・水産物・家畜など、対象によって所管省庁(農林水産省・厚生労働省・環境省など)が異なる場合があるため、対応実績を確認する。
まとめ

ゲノム編集技術によって作出した生物がカルタヘナ法の規制対象となるかどうかは、利用したゲノム編集技術や外来核酸の残存状況などを踏まえて判断され、規制対象外であっても情報提供が求められる場合があります。特に農作物・水産物・家畜などを開放系で利用する予定がある場合は、制度への理解と規制対応の実績を持つ受託会社を選ぶことが重要です。

監修者からのコメント

刑部 祐里子Yuriko Osakabe
刑部 祐里子教授のプロフィール
  • 東京科学大学 生命理工学院 教授
  • 生命理工学系 生命理工学コース
  • 所属学会:日本分子生物学会、日本農芸化学会、日本ゲノム編集学会、日本植物生理学会、日本植物学会、日本植物バイオテクノロジー学会

カルタヘナ法の取扱いは、外来核酸が最終的に残存しているかどうかがポイントになります。私自身、環境省の検討会でこの整理に関わった経験がありますが、判断には専門的な知見が必要な場面も多くあります。特に開放系での利用を検討している場合は、規制対応の実績がある受託会社に早めに相談することをおすすめします。

     
ERS/BROADの
ライセンスを使用する
【目的別】ゲノム編集受託サービス会社3選
           

複雑なゲノム編集を
無駄なくスピーディーに 成功させたい

GenAhead Bio

GenAhead Bio公式HP
引用元:GenAhead Bio公式HP
(https://jp.genaheadbio.co.jp/)
  • ノックイン・レポーター細胞・マルチプルKOなど、一般的なプロトコールから既存プロトコールでは再現できない複雑なゲノム編集まで対応。受託実績は190件超(※)で、他社に断られた案件の引き継ぎにも応じる。
  • プール細胞の段階で編集成否を早期に確認できる独自のCRISPR-SNIPER法を採用。研究スケジュールが逼迫している場面でも、2~3週間でGo/No Goの判定を出し、後工程の遅延・手戻りを防ぐ
納期の目安

2〜3週間

(成否判定)

主な対象生物・細胞種
  • iPS細胞
  • 細胞株
  • 初代培養細胞

マウス・ラット等の
ゲノム編集動物モデルを
作製したい

セツロテック

セツロテック公式HP
引用元:セツロテック公式HP
(https://www.setsurotech.com/)
  • KOマウス・Floxマウスといった幅広い種類の遺伝子改変動物モデルを受託。マウス受精卵へのインジェクション技術を保有し、動物モデル作製を専門外とする研究者でも、必要な仕様を伝えるだけで依頼できる。
  • CRISPR/Cas9での編集が難しいケースに対しても、独自技術「ST8」による代替アプローチが可能。一度の問い合わせで複数の手法を提案してもらえるため、動物モデル作製の選択肢が広がる。
納期の目安

5ヶ月〜

(動物納品)

主な対象生物・細胞種
  • マウス
  • ラット
  • 培養細胞
  • 畜産動物
  • 微生物

ゲノム編集から
オフターゲット解析等まで

一括で依頼したい

タカラバイオ

タカラバイオ公式HP
引用元:タカラバイオ公式HP
(https://www.takara-bio.co.jp/ja/index.html)
  • sgRNA設計・細胞株作製・オフターゲット解析・各種アッセイ(FCM・WB・PCR)まで、複数業者への発注・調整なしに同一窓口で完結。論文提出・社内審査に必要なデータを一貫した品質で揃えられる。
  • 自社開発のCRISPR試薬「Guide-itシリーズ」を販売。その試薬を使って上手くいかなかった場合も、別の受託先を探すことなく、そのまま依頼できる。試薬の仕様を知り尽くしたチームが対応するため、条件設定のやり直しも発生しない。
納期の目安

4.5ヶ月〜

(株・動物納品)

主な対象生物・細胞種
  • iPS細胞
  • 細胞株
  • 初代培養細胞
  • マウス
  • ラット
※参照元:GenAhead Bio公式HP(https://jp.genaheadbio.co.jp/genome-editing/)
情報は2026年8月時点