家畜

目次

ウシ・ブタ・ニワトリなどの家畜においても、ゲノム編集技術を活用した育種研究が進められています。従来の交配育種と比べ、目的とする遺伝子へ効率的に変異を導入できる点が特徴ですが、繁殖特性や育種体系に加え、食品利用を見据えた規制対応など、家畜特有の考慮事項もあります。

本記事では、家畜におけるゲノム編集の仕組みや主な用途、作製手法、外部委託時の注意点について解説します。

刑部 祐里子Yuriko Osakabe
刑部 祐里子教授のプロフィール
  • 東京科学大学 生命理工学院 教授
  • 生命理工学系 生命理工学コース
  • 所属学会:日本分子生物学会、日本農芸化学会、日本ゲノム編集学会、日本植物生理学会、日本植物学会、日本植物バイオテクノロジー学会
                   

様々な生物におけるゲノム編集技術の応用を目指した基礎研究をテーマに、特に、新規ゲノム編集技術の基盤開発研究を行っています。ゲノム編集技術の医療応用や植物分野の応用技術開発を進めています。

家畜のゲノム編集とは?

家畜のゲノム編集では、受精卵へゲノム編集因子を直接導入する方法に加え、体細胞をゲノム編集した後に体細胞核移植(SCNT)を行う手法が用いられることがあります。これは、優良形質を持つ個体や特定の遺伝性疾患を保因する個体の体細胞を編集し、そのゲノムを保持した個体を作製できるという利点があるためです。

家畜のゲノム編集の
主な用途

  • 遺伝性疾患の原因遺伝子修復:特定の品種に広まった遺伝性疾患の原因となる変異を修復し、健全な個体の作出を目指す。
  • 生産性の向上:飼料効率や成長速度、産肉性など、生産性に関わる形質を改良する。
  • 動物福祉に関わる形質改良:角なし品種の作出など、除角作業の負担軽減につながる改良を行う。
  • 疾患モデルの構築:ヒトの疾患を再現した大型動物モデルを作製し、医療研究に応用する。

農研機構の研究では、黒毛和種の種雄牛の一部が保因するIARS異常症(遺伝子変異によりタンパク質合成不全が生じる遺伝性疾患)について、CRISPR/Cas9とpiggyBacシステムを組み合わせ、外来DNA配列を残さずに原因変異を修正したクローン胎子の作製に成功したことが報告されています。

家畜のゲノム編集の
主な作製手法

  • 体細胞編集+体細胞核移植(SCNT):優良な遺伝的背景を持つ個体などから採取した体細胞をゲノム編集し、その細胞をドナーとして体細胞核移植を行う。得られたクローン胚を受胚動物へ移植し、編集個体の作出を目指す。
  • 受精卵への直接導入:CRISPR/Cas9などのゲノム編集因子を受精卵へ直接導入し、標的遺伝子に変異を導入する。
  • ゲノム編集ツールの選択:目的とする変異や標的配列、対象種に応じて、Cas9をはじめとする各種ゲノム編集ツールから適切なものを選択する。

ゲノム編集受託サービス
会社の事例

セツロテック

セツロテック家畜事例
引用元:セツロテック公式HP(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000024912.html)

セツロテックは、独自開発したCas9代替因子「ST7」「ST8」を活用し、ウシ・ブタ・ニワトリなどの産業動物へのゲノム編集技術の応用を進めています。CRISPR/Cas9では商業利用時の特許ライセンスが課題となることを背景に、自社技術を活用したシンプルなライセンス体系の構築を進めており、産業動物や植物を対象としたゲノム編集の事業化に取り組んでいます。

GenAhead Bio・タカラバイオ
について

GenAhead Bio・タカラバイオは、いずれも主にiPS細胞や培養細胞を対象としたゲノム編集受託サービスを公開しており、本記事執筆時点では家畜を対象としたゲノム編集受託サービスの公開情報は確認できませんでした。家畜での依頼を検討する場合は、対応可否を直接確認することをおすすめします。

外部委託する際の注意点

  • 対応可能な家畜種:依頼したい家畜種(ウシ・ブタ・ニワトリなど)でのゲノム編集や繁殖技術の実績があるか。
  • 育成期間の見通し:家畜は妊娠期間や性成熟までの期間が長く、世代更新に時間を要するため、実験動物より開発期間が長期化しやすい。
  • 体細胞核移植(SCNT)を伴う場合の確認事項:核移植を伴う場合、発生率や出生率、得られた個体の健全性をどのように評価するか確認する。
  • 規制対応の知見:食用利用を目的とする場合、カルタヘナ法や食品としての届出制度など、関連法令や制度への対応実績があるか確認する。
まとめ

家畜のゲノム編集は、遺伝性疾患の原因となる変異の修正から生産性の向上、動物福祉に関わる形質改良まで、幅広い可能性を持つ技術として期待されています。一方で、世代更新に時間を要することに加え、食品利用を見据えた規制対応など、実験動物とは異なる考慮事項があります。外部委託を検討する際は、各社の実績を確認したうえで選定することが重要です。

監修者からのコメント

刑部 祐里子Yuriko Osakabe
刑部 祐里子教授のプロフィール
  • 東京科学大学 生命理工学院 教授
  • 生命理工学系 生命理工学コース
  • 所属学会:日本分子生物学会、日本農芸化学会、日本ゲノム編集学会、日本植物生理学会、日本植物学会、日本植物バイオテクノロジー学会

家畜のゲノム編集は、遺伝性疾患の修復や生産性の向上など、産業的な意義の大きい分野です。一方で、育成期間の長さや規制対応など、マウスなどの実験動物とは異なる視点での準備が必要になるため、この分野での実績がある受託会社に相談することをおすすめします。

     
ERS/BROADの
ライセンスを使用する
【目的別】ゲノム編集受託サービス会社3選
           

複雑なゲノム編集を
無駄なくスピーディーに 成功させたい

GenAhead Bio

GenAhead Bio公式HP
引用元:GenAhead Bio公式HP
(https://jp.genaheadbio.co.jp/)
  • ノックイン・レポーター細胞・マルチプルKOなど、一般的なプロトコールから既存プロトコールでは再現できない複雑なゲノム編集まで対応。受託実績は190件超(※)で、他社に断られた案件の引き継ぎにも応じる。
  • プール細胞の段階で編集成否を早期に確認できる独自のCRISPR-SNIPER法を採用。研究スケジュールが逼迫している場面でも、2~3週間でGo/No Goの判定を出し、後工程の遅延・手戻りを防ぐ
納期の目安

2〜3週間

(成否判定)

主な対象生物・細胞種
  • iPS細胞
  • 細胞株
  • 初代培養細胞

マウス・ラット等の
ゲノム編集動物モデルを
作製したい

セツロテック

セツロテック公式HP
引用元:セツロテック公式HP
(https://www.setsurotech.com/)
  • KOマウス・Floxマウスといった幅広い種類の遺伝子改変動物モデルを受託。マウス受精卵へのインジェクション技術を保有し、動物モデル作製を専門外とする研究者でも、必要な仕様を伝えるだけで依頼できる。
  • CRISPR/Cas9での編集が難しいケースに対しても、独自技術「ST8」による代替アプローチが可能。一度の問い合わせで複数の手法を提案してもらえるため、動物モデル作製の選択肢が広がる。
納期の目安

5ヶ月〜

(動物納品)

主な対象生物・細胞種
  • マウス
  • ラット
  • 培養細胞
  • 畜産動物
  • 微生物

ゲノム編集から
オフターゲット解析等まで

一括で依頼したい

タカラバイオ

タカラバイオ公式HP
引用元:タカラバイオ公式HP
(https://www.takara-bio.co.jp/ja/index.html)
  • sgRNA設計・細胞株作製・オフターゲット解析・各種アッセイ(FCM・WB・PCR)まで、複数業者への発注・調整なしに同一窓口で完結。論文提出・社内審査に必要なデータを一貫した品質で揃えられる。
  • 自社開発のCRISPR試薬「Guide-itシリーズ」を販売。その試薬を使って上手くいかなかった場合も、別の受託先を探すことなく、そのまま依頼できる。試薬の仕様を知り尽くしたチームが対応するため、条件設定のやり直しも発生しない。
納期の目安

4.5ヶ月〜

(株・動物納品)

主な対象生物・細胞種
  • iPS細胞
  • 細胞株
  • 初代培養細胞
  • マウス
  • ラット
※参照元:GenAhead Bio公式HP(https://jp.genaheadbio.co.jp/genome-editing/)
情報は2026年8月時点